会社員よりも突発的な出費が必要になることが多い個人事業主ですが、一般的には会社員よりもローンの審査に通りにくいと言われています。自営業やフリーランスでも金利の低いフリーローンを利用できるのか、気になりますよね。
- 個人事業主がフリーローンを契約することは可能?
- フリーローンを事業資金として使うことはできる?
- 審査に通るためのコツを知りたい
この記事は、そんな個人事業主やフリーランスで活躍する方の疑問にお答えしています。審査が通りにくいのであれば、事前の対策は必須です。この記事さえ読めば、お金を借りる前にしておきたいことの全てが分かります。
個人事業主でもフリーローンは利用できる
会社員よりもお金を借りることが難しいとされている個人事業主ですが、結論から言えば、個人事業主でもフリーローンを利用することは可能です。ただし、同じ年収の会社員よりは審査が厳しいのも事実です。
金融機関がお金を貸したい人は「長期間安定した収入があり、月々の返済をきちんとしてくれる人」です。会社員は仕事量に波があって残業代の増減があったとしても、余程のことがないかぎり基本給をもらうことができます。
このため金融機関にしてみれば、会社員は貸付しやすい働き方をしている人たちということになります。特に公務員のように、リストラの可能性がほとんどゼロに近いような人たちは、安定した収入が約束されているため、積極的にお金を貸したい相手です。
ところが個人事業主の場合は、仕事がないときには収入が大幅に減ります。年収が360万円でも、毎月30万円入るとは限らず、今月は50万円の収入はあったけど、先月は10万円しか収入がなかったという働き方をしている個人事業主も珍しくありません。
月に50万円の収入があれば返済に困ることはありませんが、それが急に10万円となると、借金の返済が滞る可能性があります。それでもローンの返済額は毎月一定額なので、金融機関はこのような収入形態を嫌います。その結果として、個人事業主の審査は会社員の審査よりも厳しくなります。
個人事業主はお金を借りづらいということが分かりましたが、お金が必要となる場面はサラリーマンより多いという問題を抱えています。中でも気になることが、「フリーローンを事業資金として使うことができるのか」ということです。そこで次章では、その問題について詳しく説明していきます。
事業資金として使えるかどうかは「金融機関次第」
個人事業主の場合は、個人の財布と事業の財布が同じになっていて、年末に帳簿をつけて帳尻合わせというようなことがよくあります。もちろん本来であればNGなのですが、実態としてはそのような個人事業主がほとんどではないでしょうか。
このため、借りたお金を事業資金に使いたいというケースが多々あります。ところがフリーローンは、借りる際に申請した用途以外に使うことができません。そのため、他の用途で借りたお金を事業資金に使うことはできません。事業資金に使ったことがバレてしまったら、一括返済を求められることもあります。
それでは、最初から事業資金を借りる目的でフリーローンを利用することはできるのでしょうか?その答えは、「金融機関次第」ということになります。
事業資金として借りれるフリーローンもある
基本的な考え方としては、フリーローンを事業資金に使うことはできません。ただし、一部の金融機関では「事業用資金として利用可能」としていることがあります。事業資金として利用することができるかどうかは、金融機関によって変わってくるということです。
例えば横浜銀行のビジネスフリーローンのように、個人事業主のビジネス向けに用意している商品もあれば、八千代銀行のように事業資金も含めて、使用用途が自由な商品もあります。
メガバンクのフリーローンは事業資金に使うことができませんが、地方銀行の場合は柔軟に対応していることもあります。事業資金に使いたい場合は、地方銀行で確認してみましょう。ただし、住んでいる地域の地銀でしか契約できないので、他地域に事業資金として借りれるフリーローンがあったとしても利用できません。
運良く住んでいる地域の地銀が事業資金に使えるフリーローンを用意していれば、もちろん事業に使うお金を借りることができます。しかしあえてフリーローンを利用するメリットは何なのでしょうか?次章で説明していきます。
フリーローンで事業資金を借りるメリットは?
事業用資金を借りる方法は、ビジネスローンや日本政策金融公庫の貸付などがあります。それらを利用せずに、あえてフリーローンを利用して事業資金を借りるメリットはどこにあるのでしょう?その答えは、フリーローンの方がお金を借りるまでの期間が短いからです。
ビジネスローンや日本政策金融公庫の貸付のほうが有利な条件でお金を借りることができます。借り方にもよりますが、日本政策金融公庫でお金を借りるときの金利は3%以下です。フリーローンも金利は低めに設定されていますが、それらの金利と比べるとやや高めに感じます。
ところが、ビジネスローンも日本政策金融公庫も「貸してください」と言って、即答で「はいどうぞ」となるわけではありません。事業計画書などの提出を求められることもありますし、審査そのものにとても時間がかかります。
フリーローンも即日で融資を受けられるというわけではありません。それでも、ビジネスローンや日本政策金融公庫と比べると、申し込んでから融資開始までの時間は短めです。できるだけ早く融資を受けたいという場合には、フリーローンのほうが便利です。
融資までのスピードと手続きの楽さがフリーローンにはあります。そのメリットと金利が高めになるというデメリットを天秤にかけて、自分の置かれている状況に応じて使い分けるようにしましょう。
緊急に事業資金が必要な時は、フリーローンでお金を借りるのがオススメです。ただし先に説明したように、借りたお金を事業資金として使っていいものを選ぶようにしましょう。フリーローンは使いみちが限定されるという特徴を持っていますが、生活費に使いたい場合はどうなのかを次章で説明していきます。
生活費には利用できない
思わぬ出費が膨らんでしまって、生活費が足りないということはよくあります。給料が安定しないフリーランスや個人事業主ほど、その傾向があります。そんなときに低金利のフリーローンで生活費を借り入れできれば、非常に助かります。しかし結論をお伝えすると、生活費を借りるためにフリーローンを契約することはできません。
そもそもフリーローンというのは、使用用途が明確なものに対して融資を行うものです。結婚式の資金や海外旅行、パソコンや家具の購入などがその主な使用用途で、融資を受けるには見積書などが必要になることもあります。
このため、見積書もなく明確な使用用途もない生活費として、フリーローンを利用することはできません。これは個人事業主でも会社員でも同じで、フリーローンを生活費として使うことはできないケースがほとんどです。
ところが、一部の金融機関では生活費(生活資金)として利用可としていることがあります。すべての金融機関で利用できるわけではありませんが、事業資金と同じように地方銀行によっては、使用用途を自由に設定しているようなことがあります。
ただし、利用する金融機関や金融商品によって、生活費としての利用の可否が違いますので、必ず商品概要で確認してください。
どうしても生活費を借りたいということであれば、カードローンを使うという手があります。カードローンなら使用用途は自由なので、足りない生活費の補填に使えます。
カードローンは限度額の範囲であれば借りたお金を何に使っても構いません。フリーローンとどんな違いがあるのか詳しく説明していきます。
フリーローンとカードローンの2つの違い
個人事業主がお金を借りる方法はフリーローンに限りません。カードローンを使うことも可能ですが、この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?主な違いは以下の2点です。
- 融資の回数
- 金利の違い
インターネットでフリーローンを調べると、カードローンを紹介しているサイトなどがあります。実際にはフリーローンとカードローンには明確な違いがあります。それは「フリーローンは融資を受けられるのが1回だけ」ということです。
カードローンは融資限度額を設定し、その範囲内であれば何度でもお金を借りることができます。ところがフリーローンの場合は、最初に融資を受けたら、あとは設定した返済期間で返済していくだけです。追加融資を受けるには、また審査を受けるところから始めます。
また一般的には、カードローンよりもフリーローンのほうが低金利です。金融機関によって違いはありますので、フリーローンが絶対に低金利というわけではありませんが、知識としてはカードローンよりもフリーローンが低金利になりやすいと覚えておきましょう。
金融商品の場合は金利が低いほど審査が厳しくなります。このため、同じ金融機関の商品であればカードローンよりもフリーローンのほうが、審査が厳しくなる傾向があります。フリーローンの審査に落ちて、カードローンの審査には通過したということは珍しくありません。
この2つの違いを理解した上で、まず低金利のフリーローンを契約するという方法がオススメです。次章では契約に必要な書類について説明していきます。
フリーローンの契約に必要な書類
個人事業主でもフリーローンを利用してお金を借りることができますが、会社員と違って安定した収入があることを示さなくてはいけません。このため、正社員の人たちと違った書類の提出を求められることがあります。
個人事業主が提出する書類は下記のようなものがあります。これはフリーランスでも変わらないので必ず覚えておきましょう。
- ・ 確定申告書の写し
- ・ 課税証明書
- ・ 住民税納税通知書
個人事業主やフリーランスが審査の際に一番重視されるのが収入状況です。返済に問題がないレベルの収入があることを証明するために、公的な書類を提出しなくてはいけません。会社員であれば源泉徴収票で収入を証明することができますが、個人事業主の場合はそうはいきません。このため、収入を確認するための書類として、上記のいずれかを求められることがあります。
金融機関によっては、決算書の提出を求められることもあります。これは、月々の収入が安定しているかの判断材料に使われます。
会社員の場合は、収入証明書の提出が不要になることも多いのですが、個人事業主の場合は多くのケースで収入証明書の提出を求められます。個人事業主に対しては、それだけ慎重に審査をしているということを頭に入れておきましょう。
本人確認書類の提出は、個人事業主や会社員に限らず必要です。引っ越しなどをして、免許証の住所変更をしていないという人は、申し込みをする前に免許証の住所変更手続きを済ませておきましょう。
会社員と個人事業主の書類上の違いはこれだけです。すぐに書類を提出できる状態にしておけば、審査にかかる時間を短縮することができます。それでも、必ず審査に通るわけではないので注意しましょう。なぜ、個人事業主はこんなにも審査が厳しいのか、次章で詳しく説明していきます。
どうして自営業は審査に通りにくいの?
「会社員はお金を借りやすそうでいいな」そう感じている個人事業主の方も多いかもしれません。個人事業主の場合は、会社員よりも稼いでいるにも関わらず、お金を貸してもらえないということがよくあります。それではなぜ、個人事業主や自営業は審査に通りにくいのでしょう?
最も大きな理由が「収入が不安定であること」です。今の業績がどれだけ良くても、明日にはどうなっているのかわからないのが自営業です。そのため長期で返済が必要になるフリーローンは、働き方に合っていない借り入れ方法なのです。
個人事業主の場合、起業から3年目で約60%の人が廃業します。10年ですと90%近い人が廃業しています。フリーローンによっては、融資期間を10年に設定しているものもあります。この場合、融資した10人のうち9人が廃業して、事業を継続できない計算になります。
事業を継続できないことと、お金に困ることが必ずしもイコールというわけではありませんが、多くのケースでは収入面に問題があるため廃業します。その際に、融資したお金をきちんと返済してくれればいいのですが、債務整理される可能性もあります。
このため、金融機関は自営業や個人事業主に対して慎重な審査を行います。10年はともかく3年でも半数以上が廃業します。お金を貸す側としてとてもリスクが高い融資となるため、個人事業主に対しての融資は二の足を踏むことになるわけです。
特に起業して数年は、とても不安定な状態にあるため審査落ちしやすい傾向にあります。とはいえ10年以上継続している場合は、それほど廃業率も高くありませんので、起業したてよりも融資してもらえる可能性は上がります。
これらの話を総合すると、会社員でいうところの「勤続年数」と個人事業主の「継続年数」は似ています。長く安定した事業をしていれば、信用も上がり金融機関側も審査が甘くなります。
そして近年、雇用形態に問わられない働き方をする「フリーランス」と呼ばれる人が増えています。特定の企業に所属しないことで自由な働き方ができるのが特徴ですが、個人事業主同様にフリーローンの契約に於いては不利な立場となります。こうしたフリーランスと呼ばれる人たちがお金を借りることができるのかどうか、次章で詳しく説明します。
今流行りのフリーランスは利用できる?
個人事業主でも、フリーローンを利用してお金を借りることができますが、それではフリーランスの人はどうでしょうか?取材などで海外に行かなくてはいけないけど、お金が足りない。そんなときにフリーランスでもフリーローンが利用できるといいのですが、実際のところどうなのでしょう。
まず大前提として、フリーランスと個人事業主の大きな違いはありません。フリーランスでも開業届を出して一定の収入を得ていれば個人事業主です。そのため審査の際にフリーランスか個人事業主かという点は見られません。
そのためフリーランスで活躍する方でもフリーローンの利用は可能です。案件ごとに企業と契約して仕事をするのがフリーランスなので、大手の企業と安定して仕事をしているような人であれば審査も有利になります。
もちろん審査内容も個人事業主と変わらないので、確定申告書のような収入証明書類の提出が求められ、場合によっては決算書の提出も必要になることもあります。当然ですが、フリーランスであってもフリーローンで事業資金を借りることはできないので注意しましょう。
ここまでの説明で、個人事業主であってもフリーランスであっても審査が重要ということがわかりました。提出書類も全て揃えた上でも審査に落ちてしまった場合はどうしたら良いのか、その対処法を紹介します。
審査に落ちたときの対処法
会社員と比べて、個人事業主がいかにお金を借りにくいかというのは説明してきました。個人事業主としてフリーローンの審査に通過できなかった場合は、どのようにすればお金を借りることができるのでしょう。審査に落ちてしまったら行いたい対策を2つ紹介します。
- 金利が高いフリーローンで再度審査を申し込む
- 別の方法で資金調達を検討する
事業用途のお金を借りる場合と、個人的なお金を借りる場合は変わってきますが、基本的な考え方としては、審査落ちしたフリーローン商品よりも金利の高い商品を選びます。フリーローンの中でも金利の低いものを選ぶ、もしくはカードローンのような商品での借り入れを検討しましょう。
カードローンでも、銀行系のカードローンは金利が低く審査が厳しいのですが、消費者金融のカードローンは銀行ほど審査が厳しくありません。もちろん審査が甘いということはありませんが、安定した収入があれば審査落ちする可能性は下がります。
また、まとまった事業資金を借りたいということであれば別の方法があります。時間や手間がかかりますが、ビジネスローンや日本政策金融公庫からの融資も検討してください。融資が必要な理由を明確にすることができ、事業の継続性を示すことができれば、融資を受けることはそれほど難しくありません。
ただし、金策に苦労しているというような状態では、金融機関も国の機関もなかなか融資には応じてくれません。ぎりぎりになって融資を依頼するのではなく、できるだけ事業に余裕のあるうちに借り入れするようにしましょう。
個人事業主も法人と同様、事業計画は重要です。金融機関が安心できる材料を整えることが、お金を借りるための第一歩です。他にも、固定回線を用意するなどという対策も有効です。社会的な信用度を少しでも上げておくことが重要です。
次章では個人事業主がフリーローンを借りる時に最も多い疑問、「在籍確認はどうなるのか」という点を解説していきます。
個人事業主の在籍確認はどうなるの?
フリーローンを利用するときには、審査の際に在籍確認を行います。これは審査を有利にするために、勤務先について虚偽の申告されることを防ぐためです。中小企業ではお金を借りにくいため、大手企業に勤めているということにして申し込みを行う人がいます。
それを防ぐための在籍確認ですが、個人事業主の場合ももちろんこの在籍確認はあります。基本的には事務所として登録している場所に電話がかかってきます。きちんとした事務所の場合もあれば、自宅という場合もありますが、いずれにしても電話での確認は行われます。
このため、フリーローンを利用したい場合は、個人事業主でも固定電話を用意しなくてはいけません。携帯電話でいいじゃないかと思うかもしれませんが、携帯電話は簡単に番号を変えることができるため、在籍確認としてはほとんど役に立ちません。
もちろん、絶対に固定電話が必要というわけではありません。場合によっては書類の提出だけで在籍確認とみなしてくれることもあります。ただし、基本的には固定電話があることを前提としていますので、できるだけ固定電話を契約しておきましょう。
どうしても固定電話を設置できない場合や、ほとんど事務所にいないという人の場合は、事前に金融機関に相談を行いましょう。金融機関によって対応は違いますが、珍しいケースではありませんので、柔軟に対応してくれることもあります。
まとめ
この記事では、個人事業主がフリーローンを契約するための情報をまとめてきました。最後に重要なポイントを5つ、箇条書きで確認しておきましょう。
- 個人事業主やフリーランスがフリーローンを契約することは可能
- 事業資金として借りられるかどうかは「金融機関次第」
- 審査基準は「安定した収入」と「事業継続年数」がポイント
- 事業資金はフリーローン以外の方法で借りることができる
- 在籍確認は行われるため固定回線の設置が必要
金融機関は雇用形態で貸し出しの可否を決めているわけではありません。安定した収入があって、長期に渡って返済が可能であると判断できればお金を貸してくれます。そのため個人事業主やフリーランスでもフリーローンの契約自体は可能です。
ただし会社員に比べると審査が厳しく、提出する書類も増えるというデメリットがあります。事業資金を貸してくれるフリーローンはあまり多くないため、別の方法で資金調達をするのがオススメです。フリーローンはあくまでプライベートのお金を借りる用途に利用しましょう。
提出する書類以外は会社員がフリーローンを契約する時と変わらないため、当然在籍確認が行われます。個人の携帯では信用度が低いため、できれば固定回線を設置しましょう。それができない場合、金融機関に相談してから申し込むのが良いでしょう。
これらの特徴を頭に入れておけば、個人事業主であってもフリーローンの契約はそう難しくありません。「どんな用途で」「いつまでに」「いくら借りたいのか」この3つを考慮した上で、どの方法でお金を借りるのかを検討しましょう。